近年、SNSを利用したロマンス詐欺や投資詐欺の被害が急増しています。警察庁の統計によれば、2024年のこれらの詐欺の認知件数は1万237件、被害額は1271億9000万円にものぼり、2025年にはさらに深刻化しています。しかもこの数字は、あくまでも「自分が詐欺に遭った」ことに気づき、なおかつ被害申告をした人たちの分だけ。実際の被害はその何倍にもなると見られています。
詐欺の被害に遭うと、お金だけでなく自尊心も損なわれます。
「まさか自分が騙されるなんて…」という悔しさ、情けなさ。
家族から責められ、逆に優しくされれば余計に、「不甲斐ない」「申し訳ない」と、自責の念にさいなまれる。
詐欺は経済的損害に加えて、被害者の心に深い傷を残す重大な犯罪です。
詐欺師に大事なお金を奪われ、自尊心を傷つけられないために、特にSNSによる詐欺被害に遭わないための方法を改めて考えてみたいと思います。
SNSを利用した詐欺被害の多くは、「誰かに相談していれば防げたはずのもの」です。
ただ、まあロマンス詐欺は他人に相談しにくいですよね。
投資詐欺は比較的相談しやすいかもしれませんが、それでも、身近に相談できる人がいない場合もあると思います。
もし、少しでも自分が騙されているのではないかと感じていて、相談できる人が周りにいない場合、当事務所にご連絡ください。「詐欺です。」とお伝えします。
でも本来は、そうなる前に、一瞬で詐欺だと見抜きたいところです。そのためには、SNSを利用する一人ひとりがリテラシーを高める必要があります。
例えば、既存のマスメディア(新聞、テレビ)は信用できないと言って、特定のYouTuberやインフルエンサーが発信する内容を盲信している人は、SNSの詐欺被害に遭いやすい傾向にあります。
そういった人たちは、いわゆるオールドメディアに依存している人たちと本質的に変わらないからです。
自分で情報を精査せず、他人の意見に丸ごと乗っかる――この状態こそが、詐欺師にとって“格好のターゲット”なのです。
リテラシーとは、「安易に人の言葉を信じない力」のこと。
そして、「自分で判断基準を持ち、情報の信頼性を見抜く力」でもあります。
では、何を基準にすればよいのでしょうか?
以下は、基本的なチェックポイントです。
• 発言内容自体に矛盾や不合理な点はないか
• 前提が事実に基づいているか
• 引用は正確か
• 論理の飛躍や論点のすり替えはないか
• 発信者の動機や背景は何か
• 発信者の過去の言動と整合性があるか
これらを意識するだけでも、怪しい情報を見抜く力が格段に高まります。
それから、特に注意すべきなのは、「感情を大きく揺さぶられたとき」です。
将来への不安、恐怖、義憤、憂国心――そういった感情やそのカタルシスは、私たちの冷静な判断力を奪います。
そして、その強い感情の流れに乗じて、発信者を「信じたい」と思ってしまう。
そんな時は、あえて反対意見に耳を傾けることが有効です。
例えば――
三橋貴明さんの意見に共感するなら、あえて米山隆一さんの見解を聞いてみる。
深田萌絵さんの主張を支持するなら、あえて筋肉弁護士(私じゃない方)の動画を見てみる。
意図的に「逆側」の声も取り入れることで、発信者その人ではなく、“発信している中身”に目を向ける視点が養われます。
そしてその中で、自分自身の思考を深めていく。
それが、リテラシー強化につながります。
人間は誰しも間違えます。
だからこそ、「この人だから大丈夫」と発信者にオールインするのではなく、その発信内容を冷静に吟味する習慣を身につけることが重要です。
詐欺被害を防ぐには、「知識」だけでなく「姿勢」が問われます。
一人ひとりがリテラシーを高め、詐欺師が暗躍できない社会をつくっていきましょう!