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賃料増額の通知を受けたとき

山笠が終わり、ようやく蝉も鳴き始め、いよいよ本格的な夏到来ですね。

最近よく受けるご相談の一つに、「家主から賃料増額の通知がきたけど、応じなければならないのか?」というものがあります。

このような場合は、まず落ち着いて、以下のような基本的なポイントを確認することが大切です。
• 通知が賃貸人や管理会社からの正式な書面かどうか
• 増額の理由が具体的に記載されているかどうか
• 賃貸借契約書に契約内容の変更に関してどのような条項があるか

そもそも、賃料は契約時の合意に基づいて決まっていて、賃貸人の一方的な意向だけで変更することはできません。
賃料増額に応じなかったからといって、直ちに明渡しや退去を求められることはなく、これを強制することもできません。

まれに、契約書に「貸主が必要と認めた場合、賃料を変更できる」といった、賃貸人に著しく有利な条項が入っていることがあります。しかし、こうした条項は、借主保護や契約内容の公平を図る借地借家法の趣旨に反し、無効と判断される可能性が高いです。
ですから、「契約書に書いてあるから仕方ない」とあきらめず、一度は専門家に相談されることをおすすめします。

「経済事情の変動」や「近隣同種建物の賃料との比較」によって、賃料の増額が認められることもありますが、その場合も基本的には「当事者の合意」が前提です。

ですので、増額それ自体やその金額に納得できない場合は、言われるがままに増額後の賃料を支払う必要はありません。これまで通り、契約書に記載された賃料(合意された金額)を支払っておけば問題ありません。

もっとも、合意当時と比べて事情に変更が生じ、賃料の増額について当事者間で新たな合意ができない場合には、賃貸人から賃料増額請求の「調停」を申し立てられることがあります。

この調停では、事情の変更に応じた適正な賃料について、不動産鑑定に関する専門家の意見を参考にしながら協議が行われます。そして、調停で賃料が決まれば、その金額は原則として「調停申立時点」までさかのぼって適用されることになります。

ここで重要なのは、「適正賃料」の判断に用いられるのは「継続賃料」であって、「新規賃料」ではないという点です。
• 新規賃料:新たに契約を締結する場合に成立するであろう賃料
• 継続賃料:既存の契約関係が継続する前提で、事情の変化などを踏まえて相当とされる賃料

後者は、現行契約の履行状況や借主保護の観点も踏まえて判断されるため、借主にとって有利な基準となる傾向があります。

たとえば、契約当初の周辺賃料相場が10万円であったにもかかわらず、あなたの賃料が5万円だったとします。その後賃料相場が20万円まで上昇したとして、賃貸人が20万円への引き上げを要求しても、それがそのまま認められることは通常ありません。
この場合、契約時の賃料(5万円)やこれまでの契約の履行状況、周辺相場の変動を考慮した「継続賃料」が判断の基準になります。

さらに、「事情の変更」は「前回の合意時点」からの変化を指します。たとえば、10年前に月額賃料5万円で契約し、8年目に双方の合意によって6万円に増額したという場合、そこから2年間の間にどのような変化があったかが審査対象になります。10年前からの周辺賃料相場の上昇すべてが加味されるわけではない点にも注意が必要です。

調停や裁判になった場合、上記の点も踏まえつつ、最終的には専門家の意見を参考に適正賃料が判断されることになりますが、いずれにせよ、家主から一方的に賃料増額を求められたとしても、即座に応じる必要はありませんし、それによって契約を解除されたり、退去を強いられることはありません。

賃貸人から家賃の増額を求められて、納得ができない場合には、取りあえず「継続賃料」に関する鑑定資料を複数提示してください、と伝えてみましょう。
周辺同種物件の現時点で新たに入居する際の賃料は「新規賃料」なので、そのような資料が出てきた場合には、これでは適性賃料が分からないので求められている増額分の賃料は支払えませんと、バシッと突っぱねましょう!

「賃貸借契約書の内容を確認してほしい」、「請求された増額賃料が適正かどうか知りたい」、「そうは言っても賃貸人の意向に逆らったら家を出ていかないといけないのではないかと不安だ」、「大家さんや管理会社がしつこくて直接交渉するのは面倒くさい」、といったお悩みやご要望等あれば、当事務所までお気軽にご相談ください。

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